平安時代の金工

平安時代には、密教の伝来によりインドの武器に由来を持つ多くの密教法具として、金剛杵(こんごうしょ)、金剛鈴(こんごうれい)、輪宝(りんぼう)、 羯磨(かつま)などが中国からもたらされ、平安後期をむかえると、高まる王朝貴族文化とともに、その趣味や文化に沿った新しい金工技術が展開され、多くの洗練された細密な金工品が生みだされた。

特に作品の意匠、構図は際立ち、左右対称を強調する唐風意匠は、日本固有の動植物文をテーマとした純和風デザインへと発展した。その痕跡がみられるものとして、奈良・春日大社伝来の「藤花松喰鶴鏡」がある。この意匠はその後の和鏡の基本的な文様になった。また、この時代に色濃く影響を与えた末法思想を反映した鋳金、彫金鍛金の総合的な金工品として、経塚出土遺物や、春日大社若宮古神宝類が代表例として挙げられる。

<参考>

  1. 大滝幹夫『日本の美術 第305号 金工-伝統工芸』至文堂、1991年
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