薄肉彫

(うすにくぼり)

薄肉彫とは日本の金属工芸における特別な彫刻技法で、図様を立体的に際立たせるために薄い浮き彫り効果を使用する方法です。この技法は絵画と彫刻の中間に位置し、独自の表現方法であります。薄肉彫によって、作品の表面に水が盛り上がったかのような密度と緻密さを持たせることができます。

一般的な西洋の彫金技法における半彫刻(Haut-relief)とは異なり、薄肉彫は「Bas-relief(薄肉−工芸的彫塑性)」という概念に分類されます。この技法は高蒔絵にも似た効果が見られ、日本工芸の彫刻表現に特徴的な要素をもたらしています。

薄肉彫の制作過程は以下の通りです。まず、鋤(すきたがね)で文様の地を削ぎとったり、文様の肉付けをおこないながら、なめくり鏨で輪郭を強調し、きさげでけずり、名倉砥で砥ぎ、毛彫で彫ったあと、炭砥ぎ、磨いて仕上げます。微妙な薄肉の影を作成することが得意で、その効果は作品に深い表現力をもたらします。

<参考>

  1. 長谷川栄『日本の美術 第111号 夏雄と勝珉』至文堂、1975年
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